0円で空き家をもらって東京脱出!
0円で空き家をもらって東京脱出!
ってタイトルの地方移住を描いたコミックエッセイを読んだ感想。
まずタイトルがいいよね。すごくキャッチーだし自分も今すぐにでも東京を脱出したくなってくる。まあ自分の場合東京って言っても八丈島だからかなり東京脱出のニュアンスが人とは違うんだけど。
自分で自分の人生を切り開くのは苦労の分だけやりがいも多い
『0円で空き家をもらって東京脱出!』は東京でしがない暮らしをしていた売れない貧乏マンガ家さんのつるけんたろうさんという人の東京を脱出して田舎…って言ったら怒られそうだから地方(広島県の尾道)への移住のあれこれを描いたコミックエッセイ。興味深い内容ですごく面白かった。
ごみごみして家賃も高い都会を離れて、静かな地方でのんびり気ままなスローライフ。そういう脳みそお花畑なイメージだけで読み始めると、うまい話ばっかりじゃなくて現実は大変だなーって思う部分も多々ある。
古い家を改修して暮らせるようにするために自分で左官作業をしたりだとか見たこともないでっかい虫がわくだとか、うっかり隣の家で白骨死体を発見してしまうだとか、やっぱり田舎は噂が広まるのがあっという間だとか。
でも全体的になんつーかすごい楽しそう!そう、これは税金の高い日本を離れてタックスヘイブンに移住すればうはうはだぜ!みたいなうまい話とか得する系の話では全然なく、苦労もあるけど自分でやりたいように自分の人生を切り開いていくのは楽しいぜ!やりがいがあるぜ!それこそが生きがいってことなんじゃね?それこそが自由ってことなんじゃね?・・・みたいな話なんでしゅ。
いや、指が滑って適当こきすぎた感も正直あるけど、作者のつるけんたろうさんが本当に言いたかった潜在的なテーマとしては間違いなくそういうことだね!あたしゃ天才だからそれを見逃すことなくきちっと読み取ったよね!ぜんぜん違ったらごめんだよね!
思い切って行動しちゃえば道は自然に切り開ける
『0円で空き家をもらって東京脱出!』はタイトルこそなんかすごそうだしキャッチーなんだけど、中身は全然派手なエピソードが出てくるわけでもなく、派手じゃないエピソードを派手に描くでもなく、そういう意味ではほんとに地味とまでは言わないまでも、地に足の着いたコミックエッセイ、なんだけど、それがいいんだな、だからこそいいんだなー!
なんかすごく楽しそう!都会的な華々しい刺激とか成功とは無縁でも、地域の人達や仲間たちとの密なコミュニケーションの中にこそ本当は最高に刺激的な日常が潜んでいるんだぜヒャッハー!的な人間賛歌、人生賛歌としても読めるのであるのである。
つるけんたろうさん、地方へ移住するまでは東京で年収200万円以下でアルバイトや絵の仕事で先の見えないモヤモヤした不安に襲われながらぱっとしない人生を生きてたっぽいんだけど、半ば衝動的に思い切って尾道へ移住を決断した途端になんだかどんどん道が切り開かれていってる感があってそれが読んでてすごく楽しい。
けん玉に夢中になって出場した大会で準優勝してけん玉を教える講師になったり、自分で卓球場を作って運営することになったり、大盛況の漫画イベントを開催したり、空き家を再生してゲストハウスにしたり施設のデザインを担当したり最終的に店長になったり、なんか移住してからというものの目まぐるしいまでの人生の変化っぷりが面白すぎる!
もちろん「やっぱり人生は自分で切り開いていくもんなんじゃい!」みたいなことも思うんだけど、でもそれだけじゃない、それ以上に自分が動き出した途端に人生や運命の方でも動き出して道が切り開かれていく、っていうのをすごく感じた。
あなたにできること、できると夢見ていることがあれば、今すぐ始めなさい。向こう見ずは天才であり、力であり、魔法である。さあ、今すぐ始めなさい。
とはかの文豪ゲーテことギョエテ先生もおっしゃっている通り!『0円で空き家をもらって東京脱出!』はまさにそれを地で行くし教えてくれる、モヤモヤうだうだ生きているすべての人への「やってやろうぜ!やればできちゃうから!」という応援メッセージとも人生指南の書ともなっているんでしゅ!
住む場所や付き合う人間を変えれば強制的に人生が変わる!
「思い切ってやってみること」という自分の側での決断ということともう一つ強く感じたのが、やっぱり人との縁とか出会いってものの持っている力。もちろんそれも最初に自分のほうで思い切って飛び込んでみるっていう決断があってこその話ではあるんだけど、そこから先ははっきり言って自分の思惑や計画なんかはそっちのけで、人や人生のほうからどんどん話がやってきて、ほとんどそれに巻き込まれていくようにして次々に人生が展開していく。
かのIQ高すぎ経営コンサルタントクソ野郎の大前研一の有名な言葉に
人間が変わる方法は3つしかない。
・1つは時間配分を変える。
・2番目は住む場所を変える。
・3番目は付き合う人を変える。
この3つの要素でしか人間は変わらない。もっとも無意味なのは、『決意を新たにする』ことだ。
行動を具体的に変えない限り、決意だけでは何も変わらない
というものがある。さすが御大だけあってぐうの音も出ないほど真理なんだけど、『0円で空き家をもらって東京脱出!』に見られるような住む場所を変える(それも近所に引っ越すとかじゃなくて都会から地方へ移住するくらいのレベル)ということをすると、実は必然的に他の2つ、生活の時間配分や付き合う人間も変わらざるをえない。その結果ほとんど本人の意志とは無関係に否が応にも人生の何もかもが変わってくるというわけだ。
『0円で空き家をもらって東京脱出!』は作者のつるけんたろうさんのノンフィクション・エッセイを通してマンガでそれが追体験できる極めてスリリングな本なんでしゅ。
自分次第でなんとかできる!君も0円で空き家をもらって東京脱出!
まあすでに田舎暮らしや地方への移住に憧れていて、実用的なハウツーだけを知りたがってる人からすると物足りないというか内容がズレているかもしれないけど、『0円で空き家をもらって東京脱出!』はそもそもそういうハウツー本ではありまちぇん。
コミックエッセイだしつるけんたろうさんのマンガが普通に面白くて読みやすいから軽い気持ちで面白がりながら読んでいるうちに、読み終わる頃には人生の可能性に目が開けてワクワクしてきたり、自分にもなにかやれる気がして力が湧いてきたりやる気がみなぎったり、そんな元気のわいてくるよい本でした!
最後につるけんたろうさんの前書きのメッセージが素敵だったので引用して終わりましゅ。
アイデアや工夫しだいで多くの物事が実現できるのを目の当たりにして今ではたいていのことは「なんとかなる」ではなく「なんとかできる!!」と思えるようになりました
そうなんです!!自分から動きだせばあとはなんとでもできるんです
「あ~、人生たり~」って思ってる人には特に感じるところが多い一冊かも。おすすめです!