はてな女子の告白
はてな女子の告白
はてな女子の告白
こわいけど、今でもタイピングする指が震えてるくらいこわいけど、全部悪いのは私だから、勇気を出して告白します。
2ヶ月くらい前、付き合っていた恋人に愛想を尽かされ、仕事もうまく行かず、思うようにならない人生に途方もない疲労と虚しさを感じた私は、ふとブログを始めてみることを思い立ちました。
たいした考えがあったわけでもなく、ただ生きることの無意味さや虚しさ、マイノリティの感じている生きづらさ、そうしたものを吐き出せればいいなくらいのつもりで始めました。
もちろん最初は誰も見てくれないし、誰も読んでくれないんだからリアクションもあるはずがありませんでした。でも、あるとき最初のはてブというものをしてもらいました。その頃はまだはてブという仕組み(ソーシャルブックマークというらしいです)もよくわかっていなかったのですが、そこにはたった一言、
勃った。
と書いてありました。
そのとき、私の中のどこかが快感に打ち震え、そしてなにかが目覚めるのを感じました。
私はいわゆるビッチではありません。少なくとも自分ではビッチではないと思っています。というか、正直に言えばそんなに男性経験が豊富ではないだけかもしれません。本当は男の人が好きで好きでしかたのない私がいたのかもしれません。
とにかく一つ言えるのは、その「勃った」という勃った一言、いえ、たった一言のブコメ(はてブにつけられたコメントのことです)を見たとき、私はなにか今まで抑圧していた自分自身が目覚めるのを感じたのです。「私が欲しかったのはこれだ!」生まれてはじめてそう思えた瞬間でした。
それからの私は、それまでのどちらかと言うと喪女というのでしょうか、さえない女の鬱ブログ、愚痴ブログといった方向性を一新し、扱うテーマはもちろん、アイコンや言葉遣い、キャラ設定といったすべてを女であること、女の性を強調する路線に切り替え、下品にならない程度にビッチ臭を漂わせ、いわゆる「(男にとって都合の)いい女」としてのコンセプトを明確に打ち出していきました。するとたちまち
いい女すぎる。
はっきり言って好きだ。
メスのにおいをプンプンさせやがって・・・ビッチが・・・ヤラせろ
欲しいものがあったらこの俺が何でも買ってやるよ
といったブコメが記事を更新するごとに大量に付けられるようになりました。そのことの承認欲求を満たされる快感と、かつて経験値の低さから恐怖感を持っていた男たちが私の手のひらの上で面白いように転がされることの興奮とが、私のセックスアピールをさらに大胆に、さらに過剰なものへとしていきました。
そこからはあっという間でした。私は瞬く間にスターダムにのし上がり、女の性を売りにはてブ界隈のチ◯ポ共をエレクチオンさせることで名を上げ、新進気鋭のはてな女子のエースなどという呼び声もちらほらと聞くようになりました。
私はそこではじめて「はてな女子」という言葉を知りました。はてな女子というのは読んで字のごとく、はてなのサービスを利用している女子のことです(※年齢的に「何が女子だよ」「もう女子じゃねえだろ」と言った発言をした者は1週間以内に何者かによって消されますのでご注意ください)。
私はもともと男性だけでなく、女子に対しても苦手意識を持っていたのですが、このような名前の売り方をした以上、女性からは激しく嫌悪され、あるいは罵倒されるものと覚悟し、また覚悟したとは言いつつも、内心女性特有の執念深い嫉妬や僻みからくる誹謗中傷を大変恐れてもいました。
ところが、不思議なことに私が恐れていたそのような懸念というのは結果的に杞憂に終わりました。というのも、私にはてブの男共が集まり、屹立した何本ものチ◯ポによって支持されるようになると、不思議とそれまで私のことなど見向きもしなかったほかの女性ブロガーやいわゆるはてな女子たちまでが急に私に群がり始め、私のことを持ち上げるようになったのです。
そして、そうなってみると、当然内心では私のことを面白く思っていない女性がいないわけがないとは思うのですが、なにしろ大量のチ◯ポと女性からの支持をも集めている私にあからさまに敵対することをおそれてでしょうか、当初私が考えていたような女性ブロガーやはてな女子からの露骨な反感や嫌悪感を剥き出しにしたdisといったものはなかったのです(もっともはてなの匿名ダイアリーという匿名での書き込みができるサービスには何度か名指しで悪口を書かれました)。
そうして書く記事書く記事がはてブのホッテントリ(はてブの人気記事のことです)を果たし、1000はてブ越えや2000はてブ越えもちらほらとするようになり、まさにこの世の春とばかりに栄華の絶頂を極めていた私でしたが、あるときふと気づいてしまったのです・・・。
それが私がこの記事でしようとしている告白です。すでに身の上話が長くなってしまっていますが、どうかさらりと切り出せないような重い告白であること、そしてそのことに私が途方もない苦悩と恐怖を感じていることをお察しいただければと思います。
そう、あれはその日も「自分のことをモテるいい女だと勘違いしているがただ簡単に股を開くビッチだから男から都合のいいヤリ捨て肉便器としか思われてないだけなのにそのことを頑なに認めようとしないブスについて本当にいい女である(設定の)私が辛辣な毒舌でズバリと斬って捨てる」という内容の記事を書き、それが800はてブオーバーし、「ま、こんなものかな☆」と最近では現実の私を忘れて「新進気鋭のはてな女子のエース」としての私へのアイデンティティの同一化が進んでいた私は小洒落た口調でつぶやくと、その日のネットでの活動を終えて、得意満面といった顔でパソコンの電源を落としました。
そしてなにげなく電源の落ちた真っ暗なパソコンのモニター画面を覗いたときです。
深淵を覗くとき、深淵もまたお前を見ている ーフリードリヒ・ニーチェ
そう、そこには私が映っていました。あるがままの私、「新進気鋭のはてな女子のエース」でもなければ男共の心とチ◯ポを手玉に取り自在にエレクチオンさせるいい女でも何でもない、ただの私。
その姿はいい女どころかお世辞にも並の顔立ちですらなく、安くてみすぼらしい服を着て、ブサイクな顔と死んだ目で真っ暗なモニター画面を眺めている、ただの
一人のさえない男でした。
私、いや、俺は今日ではてな女子を引退します。
騙していたはてブのチ◯ポのみなさん、媚びていてくれたはてな女子のみなさん、許してくれとはいいません。自分の罪の大きさはわかっているつもりです。ただ本当に寂しかっただけなんです。一度でいいからちやほやされたかっただけなんです。だから許してください。 ―完―
注:本記事はフィクションであり、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。最近ひげ剃りが壊れてしまい、そのことの愚痴だけで1記事書こうとしていたところ、なぜかその前書きのつもりがこのような文章になってしまい、正直今更(僕自身含めて)ひげ剃りの話なんてどうでもよくなってしまったため、この文章はこの文章だけで記事にすることにしました。はてな女子という言葉もつい最近「お前みたいな奴に居場所はない、はてな女子に場所を譲れ」みたいなブコメをもらってはじめて知ったくらいであり、実際のはてな女子というのがどういう人たちなのかも知らなければ当然嫌っているとかdisってやろうといった意図も一切ございません。あくまでフィクションとしてお楽しみいただければ幸いですが、楽しんでいただけなかった場合もこのような駄文で本気で不快になられてしまうと大変申し訳なく、また心が痛みますので、どうぞたかがフィクションですのであまり本気で不愉快になったりお怒りになられたりされませんようお願い申し上げます。蛇足とは存じますが万が一のことがあっては申し訳なく、注意書きを添えさせていただきました。失礼致しました。