和田アキ子を口説き落とした話
和田アキ子を口説き落としたときの話。
和田アキ子をバーで口説き落としたときの話
その日、僕は和田アキ子から呼び出しを食らった。しかし呼び出されたバーについて和田アキ子の様子を見てみると、どうも説教をされたりするようなそういう雰囲気でもない。むしろいつものような覇王色覇気もなく、妙にうなだれてしおらしくしている。
ははーん、これはなにかあったな?いくら和田アキ子が芸能界のボスのようなツラをして威張り散らしていても、やはり和田アキ子とて素顔は1人の女性なのだ。少なくとも1人の人間であることは公平に言って事実だ(多分だけど)。たまには傷つくことや落ち込むことだってあるのだろう。
説教されたりいきなり張り倒されたりするおそれがなさそうな雰囲気を察して僕は少し安心した。覇王色のないレイリーなどただの老人である。そうして我が身の安全が確保されてみると、今度はとなりに座っている和田アキ子がだんだんかわいそうになってきた。
正直僕はずっと和田アキ子が嫌いだったが、今僕のとなりでグラスのカクテルも飲まずにしおらしく座っている様子を見たら多少なりとなんとかしてあげたいと思わずにはいられなくなった。
「世の中っていろんな人がいますよね」なんてことない感じで僕は切り出した。
「自分にはろくになんの能力も才能もないくせに、いや、そういう人間にかぎって人を悪く言ったりあることないこと言って誹謗中傷したり、他人の足を引っ張ったり蹴落とすことしか考えてなかったり、そんな奴らがたくさんいますよね」和田アキ子はうつむきながらも神妙な面持ちで真剣に聞いている。
「でもね、僕はそんな奴らの言うことに負けたりしないでほしいんです。そんなくだらない連中のことを気にしてくだらない生き方しかできなくなるなんて、それこそくだらなすぎるじゃないですか」うつむいていた和田アキ子が少し顔を上げた。
「僕はアッコさんには世間の言うことや他人のことなんていちいち気にしないでほしいんです」 僕はここで効果を狙って少しタメてからとどめの一言を(若干ドヤ顔で)言い放った。
「なぜならあなたは和田アキ子なんですから(ドヤァァァァァァ!!!!)」
ここで感極まった和田アキ子が「ちょっとこの人すごいこと言うわ~」と泣き笑いしながら号泣、僕は満足してウイスキーを飲み干すと、隣でバカみたいに「この人すごいこと言うわ~」を連呼しながら泣き笑いし続けるマシーンと化した感のある和田アキ子を見て思った。
「あれ?なんか・・・和田アキ子ってもっと大巨人みたいな大女かと思ってたけど、思ってたより意外と小さい・・・?威張り散らしてる嫌な女だと思ってたけど、こうしてどうでもいいことで傷ついたり、安っぽいセリフに慰められて泣いている姿はどこにでもいる普通の女の子と変わらないじゃないか・・・」当初身長2メートルをゆうに超えていたはずの和田アキ子はいつの間にか身長150センチくらいの泣いている普通のショートカットの少女の姿になっていた。
不意に愛しさがこみ上げてきた僕は、まだぐずりながら抱きついてきた和田アキ子(だったはずの少女)を「大丈夫だよ」と言って頭をなでながらそっと胸に抱き寄せ・・・
・・・そうになったところで「そんなに人恋しかったの!?」って自分でも相当びっくりして声に出して驚きながら目を覚ました。
念のため和田アキ子のことを考えてみたけど、好きになってたとかそういうことも一切なかった。この夢のことは人に話したりしないで早く忘れようと思う。