すごい映画を観た!『ターミナル』の感想
久しぶりにすごい映画を観ました。思わず誰かに聞いてほしくてブログを書かずにはいられません。本当にすごい映画でした。なにしろ原案はアンドリュー・ニコル、主演はトム・ハンクス、そして監督はスティーブン・スピルバーグ!『ターミナル』という映画です。
失敗作以外の何物でもないすごい映画『ターミナル』
以下ネタバレしかありません。言うほどのネタでもありませんが。
ターミナルは本当にすごい映画です。エンドロールが流れ始めたときは思わず「えっ!?これで終わり!?」ってびっくりした後拍子抜けして虚脱感が倦怠感となって全身を襲いました。正直いまだに立ち直れていません。
とっちらかりすぎて失敗した演劇のような映画でした。これほどまで「失敗作」としか言えない映画は久しぶり、いや、もしかしたらはじめてかも知れません。「失敗作」そうとしか言えません。
「つまらない」とか「クソ映画」とか「映画としてはよくできてるけど俺はこういう話は嫌い」とか、映画にもいろんな感想がありますが、ターミナルという映画はそういう次元ではなく、ただただひたすら純粋に「失敗作」としか言えません。
何とこのまれに見る失敗作の『ターミナル』、Amazonプライムの会員であればいつでも無料で見放題です。お金は無料だからとお金で買えない貴重な時間をドブに捨てたい人には真っ先におすすめできる、そんな失敗作こそがこの『ターミナル』です。
前半、この映画にはたしかに何かがありそうに感じられます。この映画は最後まで観るべき映画かもしれない。そう思っていた時期が私にもありました(ほんの2時間前)。
しかし実際には最後の最後まで何もないのです。からっぽです。何かありそうに見せていただけで最後の最後まで中身が何もない。ゴミ映画ですらありません。なぜならただただ中身の無いからっぽな映画だから。エンプティです。見事な脱出マジックのようにもぬけの殻です。
トム・ハンクス演じる主人公は訳あって空港から法的に出られない境遇です。そこで空港職員たちと交流したり、アラフォーの不倫キャビンアテンダントバカ女といい感じになったりします。でも結局最後はバカ女は不倫の恋に戻っていきます。なぜかといえばバカだからです。頭のなかは不倫セックスのことしかないのでしょう。
空港の責任者はまれに見る嫌なやつです。人間のクズ、ゴミ以下、畜生以下のウジ虫です。死ねばいいのに。でもそういう悪人が最後の最後で主人公とのふれあいの中で人としての優しさに目覚めたり情にほだされたり…といったことは一切ありません。最後の最後までウジ虫です。死ねばいいのに。
後半やっと法的に自由の身になった主人公。ようやく目的を果たすべくアメリカの地に足を踏み出そうとしますがウジ虫野郎の空港責任者に脅迫されます。入国するならお前と仲良くしてた空港職員たちをクビにするからな、と。ちなみにそこにただの嫌がらせ以外のなんの正当性もありません。
よくしてくれた彼らのために入国を諦めて帰国を決意する主人公。しかし話の流れとして入国の運びになります。あたたかく送り出す空港職員、および警備員たち。なんか感動っぽい感じの流れなんですけど、このままではこいつら全員クビにされてしまいます。一体どうやってあのウジ虫野郎の空港責任者を改心させるのか…と思ったらさせませんでした、そこまで描かずにエンドロール流して終わり。びっくりです。
主人公が目的を犠牲にしてでも守ろうとしてた空港職員たちは逆恨みしたウジ虫野郎の空港責任者に全員まとめて首にされたこと間違いなし。全部無意味。全部台無し。しかもそこにカタルシスも必然性も何もない。胸糞悪さしかありません。
それでも雰囲気に流されてそこまで頭を巡らせることが不可能な人たちが「感動した!」とか「久しぶりにいい映画だった」とかAmazonにレビュー書いているのかと思うとこの素晴らしい世界に祝福を!とばかりに「このすば!」と叫びたくなります。
スピルバーグもよくもまあこんな映画撮ろうと思ったなって逆に感心してさすがはスピルバーグ!って讃えたくなります。
原案のアンドリュー・ニコルは『ゴドーを待ちながら』的な雰囲気の作品にしたかったんじゃないだろうか?と勝手に想像してるんですけど、いくら何でも脚本がひどすぎる完全なる失敗作です。
トム・ハンクスの芝居だけでかろうじて映画として成り立っているように見せてはいるのですが、トム・ハンクス渾身の演技が逆に空回りしてただただトム・ハンクスが可哀想なピエロに見えました。
ターミナルは凡作でもつまらない映画でもありません。失敗作です。それ以外の何物でもありません。失敗作マニアの人には真っ先におすすめできる素晴らしい失敗作です。
ぜひこのはじめてヘロインを打ったときのような倦怠感と虚脱感をひとりでも多くの人に分かち合ってほしいです。失敗作でしかないこの映画を観ることは時間の無駄以外の何物でもなく、そしてそうであるがゆえに人生とは時間の無駄以外の何物でもない失敗作なのである、という非常に高度なメタ映画…ということもなく、ただただどこまでも純粋に失敗作としての完成度を極めた失敗作オブ失敗作です。
何にしても失敗作という事実は1ミリたりとも揺るがない堂々たる失敗作です。失敗作の殿堂入りです。後世に語り継ぐべき稀有なまでの失敗作と言えるでしょう。
失敗作マニアの人はもちろん、自分の人生は失敗だったと敗北感でいっぱいで、ある種の自傷行為のように貴重な人生の時間をドブに捨てて倦怠感と虚脱感でいっぱいになりたい人に、文句なくこのすさまじい失敗作『ターミナル』をおすすめします。おわり。